文の其方

文を吟ってます

ダブルバインド

その当時、英語を習うのはまだ特別な事で、私はとても驚いたし嬉しかった。

ドラえもんの英語やで。の言葉に更に有頂天になった。

いいの?

いいよ。

このやり取りが嬉しかった。

程なく英語の営業の男性が店に来て、教材やらシステムの説明をしにきてくれた。

月謝には問題なかったようだけど、教材費が3万円した。

母が言った。
教材費は、自分で出しなさい。

私は驚いた。

じゃあ、せめて半分出しなさい。

交渉して半分になったと思う。


3年生にとっての1万5千円は大きかったし、コツコツ貯めたお金のかなりの部分が無くなってしまう。

それに嫌だった。
習わしてくれるって言うたやん。

帰宅した父にも言われた。
お前の英語習いたいんは、その程度の気持ちか?
自分で金出すんがそんな嫌か?
みたいな事。

自尊心が傷ついて疼いた。

習いたい。
でも納得いかない。
砂を噛むような気持ちだった。

今、思えば見事なダブルバインドだった。