文の其方

文を吟ってます

母の事

母は本当に酷い人だった。

そして哀れな人だった。

ずっと子供のままで

母親の幻影を追い続けた人だった。

愛する事を知らず

愛される事ばかりを

飢えた子どもの様に

追い求めた人だった。

殴られても蹴られても

蔑まれても虐げられても

あの人を恨みきれなかったのは

あの人が小さな女の子のままだったから。

現実を視る事なく

あの人は八つ当たりの対象の私を失って

程なく死んでしまった。

あの人が死んだと聞いた時

悲しくなかった。

悲しくない事が

悲しくて泣いた。

あの人の死は

私に何も残さなかった。

其れが哀しくて泣いた。

残したのはお金だけだった。

お金を愛した人だった。

お金を愛だと思っていた人だった。

それしか知らない人だった。

かなしいひとだった。

f:id:ayo_sasa:20230225222030j:image